ムダイ0

あれは夏の晴れた日の出来事だった。自宅前に長い石の階段があり、私はなぜか必死に欠けた瓦石を右手に握りしめ、砂に擦りつけて、色をつけていた。三才の私、自宅前である着ている服はピンクのシャツに短パン
じっと観ると、砂は桃色になって見えたが、よく観ると沢山の小さな石の集まりだった。

不思議だった。
よく観ると、何が桃色になったか解らなかった。
ずっと不思議になりながら、ずっと砂を作り続ける。石階段の表面にぐるぐる擦りつける
後ろから母親が来て、私を見てこう言った。
「変わった娘、よく飽きないわねー」

そう言って呆れていた。
小学二年生
ある日は庭に蟻を捕まえて水に入れて死ぬのを観察した。巣を破壊してみたり、蛇の行き来する場所から巣穴を見つけた。
百足やバッタ、鼠、ヤモリ ミミズシロアリ 蜘蛛 ヒル カブトムシ 黄金虫 いろんな生き物のなかで遊び、後で昆虫図鑑を見た。考えたら本当にあらゆる虫が沢山いて、全然一人遊びでも寂しくないほど生き物がいた。逆に自宅の人形がとても怖かった。命がないのが怖かったのかもしれない。
蟻の墓を造った、沢山実験した後で、悪いことだと思った。花を飾り綺麗に造ると、次の日には壊れていた。誰かが踏んで壊した足跡があって、凄く哀しかった。そして自宅に入ると、鼠の玩具があって、私を見てニヤリと笑った、怖くなって玩具を触ると自分が呪われる気がした。
とにかく、動かない命がないモノが漠然と怖かった。こけし、人形、仏像。 逆に幽霊は怖くなかった、テレビの幽霊は怖かった。人工的なあらゆるものが怖かった。 なぜ怖かったのかは、解らない。存在が
生きてると安心して
死んでると怖かった。

石の塊を見つけて頬にあてて、耳で音を聴いた。 まだ三才ぐらいの私には 生物と鉱物と植物の違いがなく、命があるように
思っていた。全てが不思議だった。。
粘土と砂が混じって、そこに腐敗した鉄の錆が混じって、指で掘り返すと 奇妙な色をしていた、
ずっと掘り返してじっと奇妙な色を探していた。

とにかく下ばかり見ては
何かを探してる子供だった。
なぜ石を生き物だと思っていたかは、解らない。 何か植物も石も人が解らないところで心があるように思っていた。

変な娘と言われたり天の邪鬼と言われたりして育った。何か言い返すと怒られる毎日だった。

怒られるたびに、好きな絵を描いて一人自分の世界にこもってしまった。 本当の気持ちを言えない不器用な子供になった。

初めて描いた絵は木戸に人魚姫の絵だったような記憶がある。
意識して描くようになった頃には、漫画も真似て描くようになった。
周りは、上手に描いたと言うのに、内心劣等感だけが支配していた。
描いていると、どんどん苦しくなってゆく。
そんな日々だった、そして夢にみた風景を鉛筆画で描いたりするようになった。正直一度も自分で上手だと思えた事はなかった。 誉められるたびに自分の気持ちは苛々として、言う相手が腹ただしかった。
世の中には評価という相手がいる、評価されるたびに、全然いつも違うものになってしまった。

もしかしたら評価する人なんて賞なんて関係ないのかもしれないとすら思えた。
そんなもん、どうでもいいと思ってしまうエゴイストな自分がいつもいる。
評価する相手が現れるたびに、ピエロみたいな自分がいる。

その後でまたもっと嫌な気持ちになった。
小さな頃
大人になり数学者のグリーシャを見た時は、なんだか気持ちがよく理解できた。
もちろん、私は彼のように天才ではないけど…

結局は孤独でしか息をできない生き物なのかな?